生誕100年 櫻井陽司展
The 100th ANNIVERSARY of THE BIRTH
YOSHI SAKURAI EXHIBITION
「生誕100年 櫻井陽司展」御礼
「生誕100年 櫻井陽司展」にお越しくださいまして、誠にありがとうございました。
戦前の1930年代から最晩年の90年代に至る各年代ごとの貴重な作品を展示し、52年前に愛知県美術館で展示されて以来となる重要な大作や、デッサンの原画ファイルなども併せ60点余りの展示となりました。
ギャルリさわらび12年間の集大成ともなる生誕100年展でしたが、今回ほどお客様から私自身が感動をいただいた展覧会は、かつてなかったかも知れません。作品をご覧になりながら、こみあげてくるものを抑えきれずにいるお客様のお姿に、この12年間の思いも相俟って、私も胸熱くする場面がございました。
ご案内状にも記しましたpassionという言葉には情熱と受難の意味があり、その葛藤の中からこそ生まれる真の個性というものを、合理主義全盛の世にあって、かんがえつづけてまいりたいと思います。何よりも櫻井陽司という個性が、その道の灯火となることでしょう。
弊廊の大きな節目となる展覧会でしたが、ここまでの歩みを支えていただいた皆様には、心より感謝申し上げます。
会期中は思わぬあたたかい冬となりましたが、直後には都心でも積雪となりました。
皆様のご健勝とご多幸を衷心よりお祈り申し上げます。
廊主(2016.1.18)
第一部 2015年12月2日(水)~12月19日(土)
第二部 2016年 1月6日(水)~ 1月16日(土)
正午~午後6時 日月火曜休廊 第二部は一部展示替えがございます
櫻井陽司 《自画像》 油彩 画布 53.0x45.5cm 1974 撮影/藤森武
情熱(passion)に内包される受難(passion)、その深奥に秘む狂気、そこからこそ新しい生命は立ち上ってくる。櫻井陽司自刻印章「狂人」の意は、passionという不合理を生きることであり、芸術無限―永遠―への渇望である。
ギャルリさわらび 田中壽幸
《眠れる母と子》 写真監修/藤森武 伊勢和紙 31x25cm 原画制作1948年
櫻井陽司自刻印章「狂人」+藤森武直筆署名
※写真作品です。詳細はお問い合わせください。ご予約を承ります。
平成24年の暮れ、櫻井陽司さんのアトリエが取り壊される直前、私はアトリエの荷物等の整理のために、仕事の合間に何度か其処を訪れていました。整理をする時間は限られており、荷物の移動や保管も何人かの方に協力して頂きました。取り壊しのため立入禁止とされた後にも、もう一度だけと言ってお願いし、その際に発見されたのが、ハガキ大の汚れた箱に入ったガラス乾板でした。其処に写し出されていたのは、1948(昭和23)年作≪眠れる母と子≫。原画は既に失われていて、印刷されたその作品を陽司さんはアトリエにずっと掛けていました。この度、生誕100年櫻井陽司展にあたり、発見されたガラス乾板を元に、この作品が67年ぶりに復元されることとなりました。写真監修は、ギャルリさわらびの展示に共感していただき、また写真家土門拳の直弟子だった藤森武さんです。現在、東北5県巡回中の「藤森武写真展 みちのくの仏像」では、日本のカミの姿としての仏像への眼差しがあり、師土門とは一線を画した写真家藤森の世界が表出されています。画家櫻井陽司と写真家藤森武がぶつかり合った火花の如く産み落とされた本作ですが、母と子、それを見つめる描者、それぞれの間を結ぶ深い愛情が、見る者の心を打ちます。(ギャルリさわらび 田中壽幸)
《ローソクと絵具》 撮影/藤森武 23x16cm 原画(油彩)制作年不詳
櫻井陽司自刻印章「狂人」+藤森武直筆署名
※写真作品です。詳細はお問い合わせください。ご予約を承ります。
・《眠れる母と子》《ローソクと絵具》共、櫻井陽司会賛助(特別)会員の方の割引がございますのでお申し出ください。
・藤森武 略歴
写真家。1942(昭和17)年、東京生まれ。東京写真短期大学(現東京工芸大学)卒。62年、写真家土門拳に師事。67年、凸版印刷写真部入社。70年からフリーランサーとなり、古美術や仏像など日本文化伝承をテーマに活動。全国の六十余館に及ぶ博物館の収蔵品撮影を継続中。『白洲正子・私の骨董』(求龍堂)、『鉈彫 荒彫 謎の木彫仏』(玉川大学出版部)、『武士道―サムライたちへ』(ピエ・ブックス)、『藤森武写真展 みちのくの仏像』(山形美術館)他多数出版。日本写真家協会会員、土門拳記念館理事。
・櫻井陽司略歴は「櫻井陽司会入会のご案内」をご参照ください。
櫻井陽司(桜井陽司) 略歴
1915(大正4) 9月24日、 新潟県刈羽郡中鯖石村(現柏崎市)に生まれる。
1928(昭和3) 上京。油絵を始める。
都交通局(当時電気局)に就職(昭和24年まで勤務)。
1945(
〃 20) 板橋の大山にて戦災、作品焼失。
1946( 〃 21) 職場美術協議会結成、第1回展より出品、47年より議長をつとめる。
1947( 〃 22) 日本アンデパンダン展第1回展より出品する。
1952( 〃 27) 子供病気となり重労働を行い背骨を病める。
麻生三郎、吉岡憲推薦「櫻井陽司素描頒布会
(発起人代表 職美協中央美術研究所 杉本鷹)」。
1953( 〃 28) 三越にて平和美術展準備会に出席、第1回展より出品。
祝算之介詩集『鬼』(書肆ユリイカ)にデッサン「眠れる母と子」掲載。
1955( 〃 30) この頃より30年間、東京の松沢病院に通院。
1957( 〃 32) 名古屋サカエ画廊にて個展、以後8回程続ける。
1959( 〃 34) 東京の大倉画廊にて個展。
1961( 〃 36) 歌誌「やまなみ」主催、宇都宮東電サービスセンターにて個展。
1964( 〃 39) 愛知県美術館にて駒井哲郎と二人展、サカエ画廊主催。
1965( 〃 40) 木村定三の紹介にて柏三屋主催展を行い、以後10回。
1974( 〃 49) 柏三屋加藤重信遺志により画集発行。
1975( 〃 50) 柏三屋主催で東京のサヱグサ画廊にて個展。
1977( 〃 52) 宇都宮上野百貨店にて個展、以後毎年10年行う。
1982( 〃 57) 美術ジャーナル主催個展。
1985( 〃 60) 紙舗「直」にて個展。
1986( 〃 61) 名古屋「審美」にて個展。
アート・ロベ主催個展、以後92年まで続く。
1992(平成4) 名古屋「審美」にて第2回個展。
1993( 〃 5) アート・ロベ主催画集出版記念展。
1994( 〃 6) アート・ロベ個展、以後2000年まで続く。
2000( 〃 12) 12月24日逝去。
2002( 〃 14) アート・ロベ主催遺作展。
2003( 〃 15) ギャルリさわらび主催デッサン展(開廊記念)。
ギャルリさわらび主催「秘展 其の壱」-ランプ-。
2005( 〃 17) アート・ロベ主催回顧展。
2008( 〃 20) 愛知県美術館発行「木村定三コレクション 近現代美術」図録に作品掲載。
2009( 〃 21) アート・ロベ主催デッサン展。
ギャルリさわらび主催回顧展。
ギャルリさわらび主催「秘展 其の弐」-生と死-。
2011( 〃 23) ギャルリさわらび主催遺作展。
ギャルリさわらび主催「没後10年」展。
2012( 〃 24) ギャルリさわらび主催回顧展。
櫻井研氏により「櫻井陽司會」設立。
2013( 〃 25) 東京芸術劇場「心のアート展」特別展示、安彦講平氏推薦、
ギャルリさわらび協力。
ギャルリさわらび主催「櫻井陽司會記念」回顧展。
ギャルリさわらび主催デッサン展(開廊10周年記念)。
2015( 〃 27) 愛知県美術館「木村定三コレクション展」にて20点公開。
ギャラリーアビアントにて「生誕100年メモリアル展」。
ギャルリさわらび主催「生誕100年展 第一部」。
2016( 〃 28) ギャルリさわらび主催「生誕100年展 第二部」。
ギャルリさわらび主催「秘展 其の四」、茨城・桜川にて藤森武氏と二人展。
ギャルリさわらび主催デッサン展。
2018( 〃 30) ギャルリさわらび主催遺作展。